FABA(Facial Esthetic Bone Augmentation/顔貌審美的骨造成)とは、上顎前歯の付け根にあたる骨(A点)を造成して前方へ移動させることで、横顔の印象を改善する術式です。当院院長の綿引淳一が考案し、2025年に国際学術誌 Journal of Esthetic and Restorative Dentistry に報告しました。
骨格に原因のある横顔の問題は、これまで顎の骨を切る手術(外科矯正)でなければ対応が難しいとされてきました。FABAは、骨を切るのではなく足すという発想で、この問題に別の角度から取り組む方法です。
本ページに記載した治療(FABA、および併せて行う矯正治療・インプラント治療)は、健康保険が適用されない自由診療です。
費用・標準的な治療期間・主なリスクと副作用は「費用・治療期間・リスクと副作用」に記載しています。
本ページの内容に関するお問い合わせ:03-3281-4618(診療時間内)
このようなお悩みでご相談にいらっしゃいます
- 矯正で歯並びは整ったが、横顔の印象が変わらなかった
- 受け口と言われたが、顎の骨を切る手術は避けたい
- 笑うと歯茎が見える(ガミースマイル)のが気になる
- 口元が引っ込みすぎていると言われた
- 外科矯正をすすめられたが、神経の麻痺などのリスクが心配
- 矯正で歯を下げたら、かえって横顔が寂しくなると言われた
なぜ「歯を動かすだけ」では
横顔が変わらないことがあるのか
たとえば、笑ったときに歯茎が見えすぎる(ガミースマイル)状態を改善するために、上の前歯を内側へ倒す治療を行うとします。歯茎の見え方は改善しますが、同時に鼻の下から上唇にかけての角度(鼻唇角)が開き、口元が平坦な印象になることがあります。歯並びは良くなったのに横顔は好ましくない、という結果が起こり得るのです。
「歯茎の見え方を改善したい」と「横顔を整えたい」という2つの目標が、互いに打ち消し合うことがあります。
FABAは、この矛盾を解くために考案しました。歯を内側へ動かしながら、同時にA点の骨を前方へ造成することで、両方を成立させます。
A点とは
このA点が後方にあると、鼻の下から口元にかけてが引っ込んで見え、相対的に下顎が前に出た印象(いわゆる受け口の印象)になります。FABAは、この部分に骨を足すことでA点を前方へ移動させます。
外科矯正(顎の骨を切る手術)との違い
| 外科矯正(骨切り手術) | FABA(顔貌審美的骨造成) | |
|---|---|---|
| 何をするか | 顎の骨を切って位置を動かす | 骨を足して輪郭を前方へ出す |
| 対象 | 骨格のずれが大きい症例 | 骨格のずれが中等度まで/手術を避けたい症例 |
| 入院 | 必要な場合が多い | 不要[要確認] |
| 主なリスク | 下歯槽神経の麻痺、術後の腫脹、全身麻酔に伴うリスク | 術後の痛み・腫れ、造成量の個人差[詳細は下記] |
| 保険適用 | 顎変形症と診断された場合は適用されることがある | 適用されない(自由診療) |
| 矯正との関係 | 術前・術後の矯正が必要 | 矯正治療と並行して行う |
どちらが適しているかは、骨格のずれの程度によって決まります。FABAはすべての症例で外科矯正の代わりになるものではありません。骨格のずれが大きい場合は、外科矯正のほうが適切です。当院では両方の選択肢をご説明したうえで、ご本人に選んでいただいています。
O-PROとの関係 ―― 同じ発想の応用
当院では、骨が不足しているために歯を動かせない部位に対して、O-PRO(矯正治療に最適化された歯周再生療法)という術式を用いています。歯を支える骨を回復させることで、歯を動かせる範囲そのものを広げる考え方です。
FABAは、この考え方を顔貌に応用したものです。歯を動かすために骨を足すのがO-PRO、横顔を整えるために骨を足すのがFABA。いずれも「骨の輪郭が、できることの範囲を決めている」という同じ理解から出発しています。
| O-PRO | FABA | |
|---|---|---|
| 目的 | 歯を動かせる範囲を広げる/歯周組織を守る | 横顔の輪郭を改善する |
| 造成する場所 | 歯を動かす予定の部位の歯槽骨 | 上顎前歯の根の上(A点周囲) |
| 主に評価する指標 | 歯根の位置、骨欠損、歯肉退縮 | 鼻唇角、A点の位置、側貌 |
治療前に、結果を数値で計画します(DIP法)
FABAでは、どこにどれだけ骨を足すかを、感覚ではなく数値で決めます。当院では DIP法(Dual Incisal Positioning)という手法を用い、上下の前歯をどの方向へ何ミリ動かすか、A点に何ミリの造成が必要かを、治療を始める前に算出します。
2025年に報告した症例では、A点を約4mm前方へ移動させる計画を立て、治療後の鼻唇角が計画値とほぼ一致する結果が得られました。
症例
case症例1


- 患者
- 26歳・女性
- 主訴
- 先天欠如、噛みにくさ、笑うと歯茎が見える、顎が出ている
- 診断
- 高角骨格性III級、開咬傾向、上顎側切歯および右上第二大臼歯の先天欠如、薄い歯周組織フェノタイプ、下顎の左方偏位
- 検討した選択肢
- Plan 1:外科矯正(上下顎骨切り)+犬歯の側切歯代用 / Plan 2:上下第一小臼歯抜歯によるカムフラージュ矯正+FABA+インプラント
- ご本人の選択
- 下歯槽神経麻痺のリスクを避けたいという理由でPlan 1を辞退し、Plan 2を選択
- 実施した治療
- 上下第一小臼歯抜歯、上顎はO-PRO P1bでボーンハウジング拡大、下顎前歯部はO-PRO P1aで軟組織のみ造成、A点にFABA(約4mm前方移動)、側切歯部および右上第二大臼歯にインプラント、ラミネートベニア
- 治療期間
- 動的治療 2年6か月+補綴期間[要確認:総期間]
- 結果
- 鼻唇角 104.8°→112.5°(治療後5年で112.5°を維持)。開咬傾向と骨格性III級はほぼ計画どおり改善
- 経過観察
- 5年(3か月ごとのメインテナンス継続中)
- 費用(税込)
- [要記入]
- 主なリスク・副作用
- [下記参照]
適応と限界
FABAはすべての方に行える治療ではありません。以下を総合的に評価して判断します。
- 骨格のずれの程度(大きい場合は外科矯正が適切です)
- A点周囲の骨の状態
- 歯周組織の状態
- 全身の状態、喫煙の有無
- 矯正治療を併せて行えるかどうか
適応でないと判断した場合には、その旨をお伝えし、外科矯正を含む他の選択肢をご説明します。
費用・治療期間・リスクと副作用
自由診療である旨
費用(税込)
| 項目 | 費用(税込) |
|---|---|
| 矯正相談 | [要記入] |
| 精密検査・診断(CBCT・DIP診断含む) | [要記入] |
| FABA | [要記入] |
| 矯正治療(全顎) | [要記入] |
| インプラント(1本) | [要記入] |
| 調整料(1回) | [要記入] |
| 保定装置 | [要記入] |
標準的な治療期間・回数
主なリスク・副作用
- 高度な外科処置であり、術後に痛み・腫れ・内出血が生じます
- 造成した骨の量には個人差があり、計画どおりの前方移動が得られない場合があります
- 移植材が吸収され、時間の経過とともに輪郭が変化することがあります
- 感染が生じた場合、追加の処置が必要になることがあります
- 処置部位周辺に一時的な知覚の鈍麻が生じることがあります
- 軟組織(皮膚・唇)の変化の予測には限界があり、計画と結果が一致しないことがあります
- 経過は清掃状態や喫煙の影響を受けます
未承認医薬品・医療機器の使用について
本ページの内容に関するお問い合わせ
よくあるご質問
骨格のずれの程度によります。中等度までであれば、A点の骨を造成することで横顔の印象が変わる可能性があります。ただし、ずれが大きい場合は外科矯正のほうが適切です。まずCBCTを含む診査で、どちらが適しているかを判断します。
骨格のずれの程度で決まります。当院では両方の選択肢と、それぞれのリスク・費用・期間をご説明したうえで、ご本人に選んでいただいています。FABAがすべての症例で外科矯正の代わりになるわけではありません。
移植材には吸収されるものと残るものがあり、部位と目的に応じて使い分けます。2025年に報告した症例では、治療後5年の時点で鼻唇角が維持されていました。ただし1例の報告であり、すべての方で同じ経過をたどるとは限りません。
必要です。FABAは骨の輪郭を整える処置であり、歯の位置を整える矯正治療と組み合わせて初めて意味を持ちます。
対応できる場合があります。前歯を内側へ倒すことで歯茎の見え方を改善しつつ、FABAでA点を前方へ出すことで横顔が平坦になるのを防ぐ、という組み合わせが可能です。原因によって方法が異なるため、まず診査が必要です。
使えません。自由診療です。
もちろんです。現状を確認し、考えられる選択肢をご説明します。その場でお決めいただく必要はありません。
監修・執筆
院長
綿引 淳一(歯学博士/日本歯科専門医機構認定 矯正歯科専門医)
FABAの考案者。2025年に Journal of Esthetic and Restorative Dentistry に症例報告を発表。