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MFT(口腔筋機能療法)とは ― 歯並びと舌・お口の癖の深い関係

学術活動
2026.11.01

「矯正治療できれいな歯並びになったのに、しばらくしたら少し後戻りしてしまった」「お子さまの歯並びが気になるけれど、指摘されたのは癖のことだった」――このようなお話を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。実は、歯並びやかみ合わせには、舌や唇、頬の使い方といった「お口まわりの筋肉の癖」が大きく関わっています。今回は、この癖にアプローチする「MFT(口腔筋機能療法)」について、一般的な知識としてご紹介します。

MFTとは何か

MFTとは、Myofunctional Therapy(口腔筋機能療法)の略称で、舌や唇、頬など、お口のまわりの筋肉の使い方(機能)を整えるためのトレーニングのことです。もともとは欧米で発展してきた療法で、近年は日本の矯正歯科領域でも広く取り入れられるようになっています。

私たちが普段何気なく行っている「飲み込む」「話す」「呼吸する」といった動作には、舌や唇、頬の筋肉が深く関わっています。これらの筋肉の使い方に偏りや癖があると、歯やあごの成長、歯並びに持続的な力が加わり続けることになり、結果として歯並びやかみ合わせに影響を及ぼすことがあると考えられています。MFTは、こうした筋肉の使い方の癖を見直し、正しい機能を習得することを目指すトレーニングです。

お口まわりの「癖」にはどのようなものがあるか

お口まわりの機能的な癖として、代表的なものに次のようなものが挙げられます。

一つ目は「低位舌(ていいぜつ)」です。本来、安静にしているときの舌の先は上あごの前歯の少し後ろあたりに位置し、舌全体が上あごに軽く触れているのが望ましいとされていますが、低位舌の状態では舌が下の歯列やあごの底のほうに位置してしまいます。二つ目は「舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)」で、飲み込むときやしゃべるときに、舌を前歯の間や前歯に押し付けるように突き出してしまう癖です。三つ目は「口呼吸」です。本来、呼吸は鼻で行うのが基本ですが、習慣的に口で呼吸をしていると、口元やお口まわりの筋肉のバランスに影響することがあるとされています。そのほか、指しゃぶりやおしゃぶりの長期使用、頬杖、片側だけで噛む癖なども、機能的な癖として挙げられます。

これらの癖は、お子さまの成長期に長く続くと、あごの発育や歯の生えるスペース、歯並びの形成に影響を及ぼす可能性があるとされ、大人になってからも、歯並びの後戻りや、かみ合わせの不安定さに関連することがあると考えられています。

口呼吸とお口・全身への影響

お口まわりの癖の中でも、近年特に注目されているのが「口呼吸」です。本来、鼻には空気を加湿・加温し、ホコリや花粉などの異物をろ過する役割がありますが、口呼吸ではこの機能を経由せずに直接お口から空気を取り込むことになります。習慣的な口呼吸が続くと、口の中が乾燥しやすくなり、唾液による自浄作用が働きにくくなることで、むし歯や歯周病、口臭のリスクに関わる可能性があるとされています。

また、口呼吸の状態では、常に口が開いた状態になりやすく、舌の位置が下がる(低位舌になりやすい)ことで、あごや歯並びの発育にも影響が及ぶ可能性があると考えられています。睡眠時の口呼吸は、いびきとの関連も指摘されることがあります。ただし、口呼吸の原因はお口まわりの癖だけでなく、鼻炎や副鼻腔炎などの耳鼻咽喉科領域の問題が関わっている場合もあるため、必要に応じて耳鼻咽喉科での確認をおすすめすることもあります。

なぜ矯正治療とMFTを組み合わせるのか

矯正治療は、歯やあごに矯正力を加えることで歯並びを整える治療です。一方で、歯が並ぶ位置は、外側からは唇や頬の筋肉の力、内側からは舌の力という、相反する二つの力のバランスが取れた場所に落ち着きやすいという考え方があります。もし舌や唇の使い方に癖が残ったままだと、歯を動かして整えたとしても、その癖による力が持続的に歯に加わり続けることになり、歯並びが元の位置に戻ろうとする、いわゆる「後戻り」の一因になり得ると考えられています。

そのため、矯正治療によって歯並びという「結果」を整えるだけでなく、MFTによって歯並びに影響を与えている「機能的な原因」にもアプローチすることで、より安定した歯並び・かみ合わせを目指すという考え方が広まっています。当院が掲げる「矯正×歯周治療の包括的なアプローチ」においても、歯を動かす技術的な側面だけでなく、お口全体の機能を含めて診ていく視点を大切にしています。

安静時、舌で歯を押している舌癖の画像

MFTではどのようなことを行うのか

MFTでは、専門家の指導のもとで、舌や唇、頬の筋肉を正しく使うためのトレーニングを段階的に行っていきます。内容は年齢や癖の状態によって個別に異なりますが、一般的には、舌を正しい位置に置く感覚を身につける練習、正しい飲み込み方(嚥下)を習得する練習、口唇を閉じる力を鍛える練習、鼻呼吸を促す練習などが含まれます。

これらのトレーニングは、自己流で行うと効果が得られにくかったり、かえって不適切な癖を強めてしまったりすることもあるため、専門的な評価と指導のもとで進めることが望ましいとされています。一般的には、まず現状の癖や筋肉の使い方を評価し、目標とする機能を確認したうえで、日常生活の中で継続的に取り組めるトレーニングメニューを設定し、定期的に来院して習得度を確認しながら進めていく、という流れが取られることが多いとされています。トレーニングの具体的な内容や進め方、必要な期間については、口腔内の状態を評価したうえで、担当医または担当の歯科衛生士などがご案内いたします。

継続的な取り組みが必要となるため、ご家庭での協力も重要な要素とされています。特にお子さまの場合は、保護者の方が練習を見守り、無理なく習慣化できるようサポートすることが、トレーニングの効果を高めるうえで大切なポイントの一つと考えられています。

ご家庭で気づくきっかけになりやすいサイン

MFTの適応となるかどうかは専門的な評価が必要ですが、日常生活の中で気づくきっかけとなりやすいサインもいくつか知られています。例えば、お口をぽかんと開けていることが多い、飲み込むときに口のまわりの筋肉に力が入って唇が動く、食事の際にくちゃくちゃと音を立てて食べることが多い、活舌が気になる、就寝時にいびきをかく、朝起きたときに口の中が乾いている、といった様子が挙げられます。

これらは、あくまで気づきのきっかけとなり得る一般的な様子であり、これらに当てはまるからといって必ずしも治療が必要な癖があるとは限りません。気になる様子がある場合は、ご家庭で判断するのではなく、歯科医院での検査・評価を受けていただくことをおすすめします。

MFTはどのような方に関係するのか

MFTは、お子さまの成長期における歯並び・あごの発育のサポートとして注目されることが多い一方、大人の方にとっても無関係ではありません。矯正治療中・治療後の後戻り予防、いびきや口呼吸が気になる方、かみ合わせの安定を図りたい方など、幅広い年代の方にとって関心を持たれるテーマです。

ただし、MFTの適応となるかどうか、どの程度の癖があるのか、トレーニングが必要かどうかといった判断は、口腔内や口腔周囲筋の状態を実際に評価したうえで行う専門的な判断となります。この記事はあくまで一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の方に対する診断や指導内容を示すものではありませんので、ご自身やお子さまに気になる癖がある場合は、自己判断せず、担当医にご相談ください。

よくいただくご質問

Q. MFTは何歳から始められますか。
A. お口まわりの機能の発達段階はお子さまによって異なるため、開始時期については口腔内の状態を確認したうえで個別に判断されます。年齢の目安についても担当医にご相談ください。

Q. MFTだけで歯並びはきれいになりますか。
A. MFTは機能面へのアプローチであり、既にずれてしまった歯の位置を大きく整えるものではありません。歯並びそのものを整える場合は、矯正治療と組み合わせて行われることが一般的です。

Q. トレーニングはどのくらいの期間続けるのですか。
A. 癖の程度や年齢、取り組みの状況によって個人差が大きく、一概にお伝えすることは難しい項目です。経過を見ながら、担当者が期間の目安をご案内いたします。

Q. 大人でもMFTの効果はありますか。
A. 年齢に関わらず、機能的な癖を見直すこと自体には意味があるとされていますが、効果の現れ方には個人差があります。ご自身の状態について気になる場合はご相談ください。

当院の考え方

当院は矯正歯科と歯周治療を専門とする包括的な歯科医療を掲げており、歯並びを「結果」としてだけでなく、それを生み出す舌や口唇の機能といった「原因」にも目を向けることを大切にしています。矯正治療を行う際には、必要に応じて口腔周囲筋の状態も確認しながら、より安定した治療結果を目指しています。お口の癖やMFTについて気になることがございましたら、カウンセリングの際にお気軽にお尋ねください。

まとめ

MFT(口腔筋機能療法)は、舌や唇、頬など、お口まわりの筋肉の使い方を整えるトレーニングです。低位舌や舌突出癖、口呼吸などの機能的な癖は、歯やあごの発育、歯並びやかみ合わせ、矯正治療後の後戻りに関わることがあると考えられており、矯正治療という「結果」へのアプローチとMFTという「機能」へのアプローチを組み合わせることで、より安定した治療結果を目指す考え方が広まっています。

お口をぽかんと開けていることが多い、いびきをかく、飲み込み方が気になるといった様子は、日常の中で気づくきっかけになり得ますが、トレーニングの要否や内容は口腔内の状態を評価したうえでの専門的な判断が必要であり、自己判断で進めることは推奨されません。ご自身やお子さまのお口の癖が気になる方は、まずは当院までご相談いただき、検査を受けたうえで今後の方針についてご説明を受けていただければと思います。

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