「最近、歯茎が下がってきた気がする」「歯と歯茎の境目が前より下にある」――そんなふうに感じたことはありませんか?鏡を見るたびに気になるけれど、痛みがないから放置している、という方は意外と多いのではないでしょうか。
今回は、歯茎が下がる状態=「歯肉退縮」について、わかりやすく解説します。原因やリスク、受診のタイミングまでお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
歯肉退縮とは?わかりやすく解説
歯肉退縮(しにくたいしゅく)とは、歯茎が歯根の方向(下方向)に下がり、本来は歯茎の下に隠れているはずの「歯根(しこん)」が露出してきた状態のことです。
健康な状態では、歯の根っこは歯茎と顎の骨にしっかり守られています。ところが、さまざまな原因でその歯茎が失われると、本来外に出るはずのない歯根が口腔内に露出してしまいます。これが歯肉退縮です。
歯肉退縮はすべての年齢層に起こりますが、特に30代以降から徐々に増えてくる傾向があります。「年をとると歯茎が下がるもの」というイメージがありますが、実は若い方でも起こりますし、適切なケアをすれば予防や進行を止めることができます。

こんなサインに気づいたら要注意
歯肉退縮は、痛みなく静かに進行することが多いため、気づいたときにはすでにかなり進んでいた…というケースも少なくありません。以下のようなサインを感じたら、早めに歯科を受診することをおすすめします。
- 歯が以前より長く見える(歯と歯茎の境目が下がっている)
- 歯の根元(境目より下の部分)が黄色みがかって見える
- 冷たいものや甘いものが歯に染みる(知覚過敏)
- 歯のつけ根部分に黒っぽいすき間が見える
- 歯ブラシが当たると歯がズキッとする
- 歯茎が赤く腫れている、または触ると血が出る
特に「歯が染みる」という症状は、歯根が露出したことで外からの刺激を受けやすくなっているサインです。知覚過敏の原因の一つに歯肉退縮があることを、ぜひ覚えておいてください。
なぜ歯茎は下がるの?主な原因
歯肉退縮にはさまざまな原因があります。主なものをご紹介します。
1. 歯磨きの仕方が強すぎる(ブラッシング圧が高い)
「しっかり磨こう」と力を入れて磨いていると、かえって歯茎を傷つけてしまいます。特に横向きの強いブラッシングは、歯茎を少しずつ削り取ってしまうことがあります。硬い歯ブラシを使っている方も注意が必要です。
2. 歯周病(歯槽膿漏)
歯周病は、歯と歯茎の境目に溜まったプラーク(細菌のかたまり)が原因で歯茎や骨が破壊される病気です。進行すると歯を支える骨(歯槽骨)が溶け、それに伴って歯茎も下がっていきます。日本人の成人の約8割が歯周病またはその予備軍といわれており、歯肉退縮の最大の原因の一つです。
3. 噛み合わせや歯ぎしり・食いしばり
歯に過剰な力がかかり続けると、歯を支える骨や歯茎にダメージが蓄積されます。夜間の歯ぎしりや日中の食いしばりは自覚しにくいですが、歯肉退縮のリスクを高めます。
4. 矯正治療の影響
歯を動かす矯正治療では、歯が骨の外側に向かって移動した場合に、骨や歯茎が薄くなり退縮するリスクがあります。これは治療前の骨格や歯茎の状態、治療計画によって大きく左右されるため、矯正前に歯周組織の精密な評価を行うことが重要です。
5. 遺伝・体質的な要因
もともと歯茎が薄い体質(薄い歯肉=「薄い歯肉表現型」)の方は、外部からの刺激に対してより敏感で、退縮が起こりやすい傾向があります。これは生まれつきの特徴であり、ご自身でコントロールするのが難しい部分ですが、知っておくことでケアの工夫ができます。
放置するとどうなるの?
歯肉退縮を放置した場合、どのようなリスクがあるでしょうか。
まず、露出した歯根は歯のエナメル質(一番外側の硬い層)に覆われていないため、むし歯(根面う蝕)になりやすくなります。また、歯根部分に進行したむし歯は治療が難しく、最悪の場合は抜歯が必要になることもあります。
さらに、退縮が進むほど歯を支える土台(骨と歯茎)が失われ、最終的には歯がぐらついたり、抜け落ちたりするリスクもあります。早期に対処することで、こうした事態を防ぐことができます。
「自然なことだから」は正しいの?
「歯茎が下がるのは年のせいだから仕方ない」と思っている方も多いですが、これは半分正解で半分誤解です。
確かに加齢とともに歯茎はわずかに退縮する傾向がありますが、明らかな歯肉退縮はほとんどの場合、何らかの原因(歯周病・ブラッシング・噛み合わせなど)によって引き起こされています。つまり、原因を取り除けば進行を止め、場合によっては回復させることも可能です。
「年だから」と諦めず、専門家に相談することをおすすめします。
いつ歯科を受診すればいい?
以下のような場合は、なるべく早めに専門の歯科を受診することをおすすめします。
- 歯茎が下がっていることに気づいた(鏡で見て気になる)
- 冷たいものや熱いものが歯に染みる
- 歯ブラシを当てると血が出る
- 過去に歯周病と診断されたことがある
- 矯正治療を考えており、歯茎の状態が心配
歯肉退縮は一度失われた歯茎を完全に元通りにすることは難しい場合もありますが、進行を止め、必要に応じて治療を行うことで口腔内の健康を長く保つことができます。
まとめ
歯肉退縮は、痛みがないまま静かに進行することが多く、気づいた時にはすでにかなり進んでいるケースも珍しくありません。「なんとなく歯茎が下がってきた気がする」という違和感を大切にして、早めに専門家へ相談するのが最善の対策です。
当クリニックでは、矯正歯科と歯周治療を組み合わせた包括的な診療を行っております。歯肉退縮が気になる方、矯正を検討しているけれど歯茎の状態が心配という方も、お気軽にご相談ください。