「歯茎が下がってきたけど、治療で元に戻せるの?」――歯肉退縮についてご相談をいただく中で、最もよくいただく質問の一つです。結論からお伝えすると、「進行を止めることは多くの場合可能であり、状態によっては回復も期待できます」。そして、その可能性を最大限に高めるために重要なのが、歯周治療と矯正治療の連携です。
まず知っておきたい:歯肉退縮の「回復」と「管理」
一度失われた歯茎の組織は、残念ながら自然には元に戻りません。ただし、これは「治療する意味がない」ということではありません。歯肉退縮の治療には大きく2つの方向性があります。
- 進行の抑制:原因を取り除くことで、これ以上歯茎が下がらないようにする
- 組織の回復:外科的治療などにより、失われた歯茎を補う
どちらのアプローチが適切かは、退縮の程度・原因・患者様の全身状態などによって異なります。まずは精密な診査を受け、自分の状態を正確に把握することが第一歩です。

歯周治療でできること
歯肉退縮の最大の原因のひとつが歯周病です。そのため、多くのケースで歯周治療が治療の基本となります。
スケーリング・ルートプレーニング
歯周ポケット内に蓄積した歯石(細菌の固まり)を専用の器具で除去し、歯根の表面を滑らかにする処置です。これにより炎症を鎮め、歯茎の環境を整えます。痛みや腫れを伴っている歯茎も、適切な処置によって引き締まってくることがあります。
歯周外科治療
スケーリングだけでは届かない深い部分の歯石や感染組織を取り除くため、歯茎を切開して行う外科的な処置です。骨の再生を促す材料を用いる「再生療法」と組み合わせることもあります。
ブラッシング指導・生活習慣の改善
治療を行っても、日々のブラッシング習慣が変わらなければ歯周病は再発します。正しいブラッシング圧・方向・歯ブラシの選び方など、個々の口腔環境に合わせた指導が重要です。
外科的な治療(歯肉移植)とは
退縮が進行している場合、「歯肉移植術(CTG法・FGG法)」と呼ばれる外科手術が検討されることがあります。これは、口蓋(上顎の内側)などから歯肉組織を採取し、退縮している部位に移植する方法です。
適切に行われた場合、失われた歯茎のボリュームを回復し、審美的にも機能的にも大きな改善が期待できます。ただし、すべての退縮に対して有効というわけではなく、骨の残存量や退縮の種類・程度によって適応が決まります。
歯肉移植の適応や術式については、必ず専門の医師が診査のうえ判断します。気になる方は、まず当クリニックへご相談ください。
矯正治療と歯肉退縮の関係
「矯正をすると歯茎が下がる」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。これは完全な誤りではありませんが、正確に理解することが大切です。
矯正治療では、歯を骨の中で移動させます。このとき、歯が骨の外側(唇側・頬側)に向かって移動すると、その方向の骨や歯茎が薄くなり、退縮のリスクが高まる場合があります。特に、もともと歯茎が薄い体質(薄い歯肉表現型)の方では、このリスクが高くなることが知られています。
一方で、矯正治療が歯肉退縮の改善に役立つケースもあります。たとえば、歯周病によって失われた骨が非対称に溶けている場合、矯正で歯を正しい位置に移動させることで、骨の再生を促しやすくなることがあります。
つまり、矯正治療と歯肉退縮の関係は「良い影響も悪い影響もあり得る」ということであり、だからこそ矯正前後の歯周管理が非常に重要なのです。
矯正×歯周の連携治療が重要な理由
歯肉退縮がある、あるいはそのリスクがある方が矯正治療を行う場合、矯正医と歯周治療の専門家が密に連携することが理想的です。その理由は以下の通りです。
治療前の精密評価
歯茎の厚さ・骨の量・歯周ポケットの深さなどを事前に精密に評価することで、矯正中の歯肉退縮リスクを予測し、治療計画に反映させることができます。必要であれば、矯正開始前に歯肉移植を行うことで退縮を予防するアプローチも選択肢に入ります。
治療中の継続的なモニタリング
矯正治療中も定期的に歯周の状態をチェックし、変化が見られた場合には早期に対応します。矯正中は装置が邪魔でプラークが溜まりやすくなるため、歯周管理を並行して行うことが不可欠です。
治療後の安定
矯正後の保定期間中も歯周管理を継続することで、せっかく整った歯並びと歯茎の状態を長期間維持することができます。
当クリニックのアプローチ
東京日本橋AQUA歯科・矯正歯科 包括CLINICは、矯正歯科と歯周治療を専門とする自費専門クリニックです。「矯正×歯周」の包括的(interdisciplinary)な治療アプローチを特徴としており、お一人おひとりの口腔全体の状態を精密に評価したうえで、最適な治療計画をご提案します。
「矯正を考えているけれど歯周病が心配」「歯茎が下がっていて矯正できるか不安」という方も、まずはご相談ください。専門的な視点から、あなたのお口の状態に合った治療の可能性をご説明いたします。

日常でできる予防ケア
歯肉退縮の予防・進行抑制のために、日常生活でできることもあります。
- ブラッシング圧を弱める(ペンを持つ程度の力で十分です)
- 柔らかめの歯ブラシを使用する
- 歯間ブラシやフロスで歯と歯茎の間のプラークを除去する
- 定期的な歯科検診・クリーニングを受ける(最低年2回)
- 歯ぎしりが気になる場合はマウスピースの使用を相談する
- 喫煙している場合は禁煙を検討する(喫煙は歯周病リスクを大きく高めます)
これらのセルフケアは、歯周治療の効果を高め、長期間にわたって歯とその周囲の組織を守るために欠かせません。
まとめ
歯肉退縮は、適切な治療と管理によって進行を止め、場合によっては回復させることができます。そして、特に矯正治療を行う際には、歯周との連携が治療成功の大きな鍵となります。
「もう遅いかも」と諦めず、まずは専門家に現状を評価してもらうことが大切です。当クリニックでは、矯正と歯周の両面から包括的にサポートしております。気になることがあれば、お気軽にご相談ください。