03-3281-4618 電話予約
WEB予約
- インフォメーション -

矯正治療と歯肉退縮

学術活動
2024.09.26

はじめに

矯正歯科治療は、歯並びや噛み合わせを整えるための重要な治療法です。しかし、治療中や治療後に「歯肉退縮」が起こることがあります。この記事では、歯肉退縮にスポットを当て矯正治療との関係もお伝えしていきます。

歯肉退縮とは

歯茎が歯の根元から後退し、歯の根が露出する状態を指します。これにより、見た目の変化や知覚過敏(冷たいものや熱いものがしみる)が引き起こされることがあります。

歯肉退縮の原因

歯肉退縮の原因には以下が挙げられます。

1.不適切なブラッシング:強すぎる力でブラッシングすることや、硬すぎる歯ブラシを使用すると、歯茎が傷つき、

             後退する原因になります。

2.歯周病:歯周病は、歯茎の炎症によって歯の周りの組織が破壊され、歯茎が後退することがあります。

3.加齢:歳をとるにつれて、歯茎も徐々に後退することがあります。これは自然な老化現象の一つです。

4.歯並びや噛み合わせの問題:不適切な歯並びや咬み合わせが、特定の歯に過度な負担をかけ、

               歯茎に影響を与えることがあります。

5.矯正治療による退縮:矯正治療では力を加えることで歯を動かします。顎の骨からはみ出るような動きをすると

            歯肉退縮が起こります。

歯肉退縮の状態を評価する方法

歯肉退縮には分類があり、歯肉の後退の程度やその影響を基にしたいくつかの基準があります。主な3つの分類について解説していきます。

1.ミラーの分類(Miller’s Classification):1985年にMiller PDが提唱した歯肉退縮の分類

Class I:MGJを越えているが両側歯間部に付着の喪失や歯槽骨吸収がみられない状態です。

    完全な根面被覆が期待できます。

Class II:歯間部の歯周組織が健全で、歯肉歯槽粘膜境(muco-gingival junction:MGJ)を超えていない状態です。

    完全な根面被覆が期待できます。

Class III:歯間乳頭の喪失は認めるが、歯間部の組織に比較して大きく根面露出が存在しMGJまで、

    もしくは超えている状態です。完全な根面被覆は期待できないが、一部の根面被覆は期待できます。

Class Ⅳ:根面露出がMGJまで、もしくは超えている。歯間乳頭の喪失を認め、その喪失は根面露出と同程度のもので

     根面被覆は期待できないです。

2.カイロの分類(Cairo Classification)

2011年に発表された歯肉退縮の分類です。歯間の骨や軟組織の状態に重きを置いて分類されています。

Type1:隣接面に付着の喪失(CAL-loss)をともなわない歯肉退縮です。これは、歯間乳頭が健全であることを意味し

   ており、完全な根面被覆が期待できます。

Type2:隣接面のCAL-lossをともなう歯肉退縮です。隣接面のCAL-lossの量が頬側のCAL-lossと比較して小さいか同じ

    である状態です。歯間部の喪失の程度によっては、完全な根面被覆を達成できる可能性があります。

Type3:隣接面のCAL-lossをともなう歯肉退縮です。隣接面のCAL-lossの量が頬側のCAL-lossと比較して大きい状態で

    す。完全な根面被覆の達成は難しいとされております。

3.メイナードの分類(Maynard's Classification):歯肉と歯槽骨の厚みの状態によって、歯肉退縮のリスクを示す分類のことです。歯科外科処置の必要性を決定する指標となります。遊離歯肉移植術(FGG:Free Gingival Graft)や結合組織移植術(CTG:Conective Tissue Graft)を行うことで、Type4にあたる部位をType3に変化させ、安定した歯周組織の環境を得られます。

Type1:歯槽骨が厚く、付着歯肉も十分にある(リスク低い)

Type2:歯槽骨は厚いが、付着歯肉は少ない (リスク中)

Type3:歯槽骨は薄いが、付着歯肉は十分にある (リスク中)

Type4:歯槽骨が薄く、付着歯肉も少ない (リスク高)

矯正治療と歯肉退縮の関係

歯肉退縮やその原因、分類について解説してきました。

ここで、歯肉退縮の原因で述べた矯正治療による退縮について詳しく説明していきたいと思います。矯正治療は、歯を少しずつ移動させることで理想的な歯並びや咬み合わせを作り出しますが、歯が動く過程で歯茎にも影響を与えることがあります。特に以下の要因が、矯正中に歯肉退縮を引き起こす可能性があります。

1.過度な力のかかる歯の移動

矯正器具やワイヤーによって歯を移動させる際、力が強すぎたり、不均等にかかると、歯茎に負担がかかり歯肉が後退することがあります。特に歯の外側に過度な力がかかると、歯茎が引っ張られて退縮しやすくなります。

2. 歯並びの不正による歯茎への影響

もともと歯が前後に傾いていたり、歯の位置が極端にずれていると、矯正後に歯茎が安定しにくく、退縮が起こりやすい状態になります。これは、歯茎の厚さや形状が不安定な部分で特に問題となります。

3. 口腔内の清掃不良

矯正器具(ブラケットやワイヤー)を装着していると、歯磨きが難しくなり、プラークや歯石が溜まりやすくなります。これが歯周病を引き起こし、結果的に歯肉退縮を招く原因となります。

上記以外にも、特に綿引院長は歯肉と骨の厚さが治療結果を大きく左右すると考えており、有効なのがメイナードの分類です。しかし、矯正治療によって歯肉退縮をおこしやすい歯周組織の評価基準としては、メイナードの分類は不十分であると提唱しています。そこで2020年に綿引院長はWatahiki’s classification(綿引の分類)という独自の分類を提唱しました。メイナードの分類のType4に当たるケースをさらに3つのクラスへと細分化し、病的な歯肉状態を含め、矯正治療を行う前に歯肉退縮のリスクをより臨床的に判別できます。

class 1:歯肉のフェノタイプが薄い、アタッチメントロスなし→中程度の歯肉退縮のリスク

class 2:歯槽骨の裂開が存在、アタッチメントロスなし→重度の歯肉退縮のリスク

class 3:すでに歯肉退縮が存在、アタッチメントロスあり→ハイリスク

利点としては硬軟両方の組織を考慮している、付着の有無を考慮している、歯周再生術の選択基準に対応している、矯正治療の術前に特化しているが挙げられます。

終わりに

矯正治療は、歯並びや咬み合わせを改善し、見た目や機能を向上させる素晴らしい手段ですが、歯肉退縮といった副次的なリスクが伴う場合もあります。治療中は口腔内の健康管理を徹底し、歯科医と密に連携することが大切です。もし歯肉退縮が進行した場合でも、早期の対策や治療を行えば、大きな問題にはならずに改善することができます。

歯肉退縮が気になる方は、歯科医師に相談して適切なアドバイスを受けることをお勧めします。美しい笑顔と健康な歯茎を保ちながら、安心して矯正治療に取り組んでいきましょう。

【参考文献】

https://www.suga-dent.com/gingival

https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/keyword/40967

RESERVATION

矯正相談

当院では、皆様に矯正治療を開始するかどうかをじっくり考えて、納得いく形で治療をスタートしていただくために「矯正相談」を行っております。
理想の歯並びを手に入れる第一歩として、あなたの歯並びの現状や矯正治療に関する疑問や不安を解消する場としてぜひご利用ください。

矯正相談のご予約

矯正相談のご予約は、下記のお申し込みフォームもしくは、当院受付(03-3281-4618)までお電話下さい。