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Endodontics

根管治療

矯正治療を希望する方には、根管治療(根の治療)が必要な方の割合はとても多くいらっしゃいます。しかしながら、アメリカ型の過度な細分化され過ぎた専門医制度では根管治療と矯正治療の連携が十分に考慮されておらず、最終的な結果として、理想の治療結果とならない事が近年問題となっております。

根管治療とは?

歯の中心には、根の先の神経や血管と繋がっている歯髄と呼ばれる組織があります。この歯髄の存在によって私たちは、虫歯の痛さや冷たい水がしみるなどの知覚を感じることができます。

しかし、虫歯を放置したりすると細菌が歯髄に感染してしまい、歯髄炎と呼ばれる現象になります。さらに、細菌が歯髄から根管を通って根の先まで達すると根管の中で細菌は繁殖し感染根管とよばれる状態になってしまいます。このような、状況では場合によっては一旦痛みが軽減していく場合もあり安心して放置してしまうと病状は一層悪化して行き、根の先を中心に炎症が大きくなり周囲の骨を溶かして行きます。この状態を根尖性歯周炎と呼びます。このような状況をさらに放置してしまうと周囲の歯の健康を害してしまったり、歯を抜く必要が生じるだけでなく、上顎洞炎や細菌が血管に入り重篤な病気をもたらす危険もあります。根管治療は、これらの症状が軽減したり、治癒したり、予防できたりするのです。

根管治療では、痛んだ歯髄を除去して、根管を注意深く清掃し、 再度の感染を防ぐために根の中に詰め物をします。このように歯髄を除去する治療法を抜髄と呼びます。 一方、以前に根管治療が終了している根が再び感染してしまった場合にも、根管治療が行われます。 この場合の治療法は、感染根管治療と呼ばれます。

根管治療の期間・回数

根管治療は皆さんが想像しているよりも回数がかかります。前歯で2~3回、大臼歯という奥歯では3~4回治療回数がかかります。
感染が進行している場合にさらに治療回数が必要な場合があります。

また、根管治療が終了した後には、ファイバーコアなどの歯を補強する治療や歯冠修復処置が必要です。
これらの処置は平均3回程度に治療回数が必要となります。

つまり、根の治療を始めた歯は被せる所までが治療の一区切りとすれば、平均で前歯で5~6回、奥歯で7~8回治療回数がかかることになります。

一週間に一回程度来院すれば、約二ヶ月近くかかることも珍しくありません。
また、治療する歯が複数本ある場合には、その本数分回数がかかります。

根の治療は、とても手間のかかる治療ですが、同時にとても大切な治療でもあります。しかしながら、現在の日本の保険制度ではその重要性は以前からあまり高く評価されておりません。そこで、近年は、欧米のようにマイクロスコープで行う精密根管治療を自費診療で提供するクリニックが増えて来ました。

根管治療中の痛みの原因と対応策

原則、根管治療では、局所麻酔を行なって治療を行います。したがって、治療中に痛みを感じる心配はありません。
しかし、ごく稀に、放置してしまい重症化した虫歯などが原因で歯髄に強い感染を起こしている場合には、通常の局所麻酔の効果が十分に出ない場合があります。
そのような場合には、伝達麻酔を行なって除痛する場合があります。

また、根管内というのは、とても細くて複雑な構造を呈しています。そのため、保険診療内で行う根管治療においては歯の神経をきれいに取り除けないこともあり得るのです。そうして残存した一部の神経が根管治療中に刺激され、痛みを生じることがあります。

より痛みの少ない確実な根管治療をご希望の場合には、マイクロスコープやラバーダム防湿を用いた精密根管治療に大きなメリットがあるといえます。

根管治療の失敗率(成功率)

歯の根管は、非常細く、複雑な構造をしております。従って、完全に感染源を取り除く為には、CTスキャンを用いた術前検査とラバーダムなどをはじめとする完全な感染管理、さらにはマイクロスコープを用いた丁寧な精密根管治療が必須であると考えられております。

以上のような精密根管治療を行った場合には、成功率は80〜90%以上であると報告されております。しかしながら、日本の保険制度の中で行った根管治療の成績は50%以下であるといわれております。また、根管治療を始める前の検査や施術中に歯根破折が認めらる場合があります。歯根破折は、日々の食事や食いしばりなどが原因で起こるとされておりますが、歯根破折が発生した場合の予後は、如何なる処置を行っても極めて予後が悪いといわれております。

根管治療後の痛みの原因と対応策

根管治療では、最後に根管充填を行いますがその際に、薬剤を詰める際の熱や圧力や薬剤の刺激によって一時的な痛みが発生する場合があります。
通常は、痛み止めを飲んで頂く事で治りますので大きな問題にはなりません。

当院で行う精密根管治療では、高熱を用いる事がない、生体安全性の高いMTAセメントと呼ばれるバイオセラミックスを用いて根管充填を行いますので、術後の不快感が少ない治療を心がけております。

また、術後の痛みにおいては、しばしば治療した歯を外から押した時に鈍い痛みのような感覚を感じる場合があります。この痛みは、病気の治癒に感じる一過性の痛みで心配はありませんが、完全に消えるまでに数ヶ月以上かかる場合もあります。

いずれにしても、痛みが強かったり、長引いたりする場合は、担当医へ相談してもらうことが大切です。

要根管治療患者に治療を行わずに矯正治療した場合のリスク

近年、成人の方が矯正治療を行う機会がとても増えて来ました。しかし、これらの患者さんにおいては、矯正前の検査におてい根管治療が必要な歯が存在している場合がしばしばみられます。

このような歯に対して適切な処置を行わないで矯正治療を進めてしまった場合には、病状が悪化してしまうリスクが高まるばかりか、最悪抜歯に至ってしまう場合があります。

また、根管治療の方法も矯正移動に合わせてた素材や方法を検討する必要があります。
当院では、院長の著書である ザ・クインテッセンス “包括的矯正歯科治療”へのいざない 第5回 歯内療法と矯正歯科治療“で示した 矯正治療における根管治療のガイドラインに沿った方法を推奨しております。

要根管治療歯の判断について

矯正前にどのような状態の歯を根管治療すべきかに関して、従来の矯正治療では十分に検討されて来ませんでしたが、当院では、Alqerbanらの報告やアメリカ、ヨーロッパの学会が示す基準を参考にした新たな基準を実際の臨床に用いております。

再根管治療の適応症 簡易版

  1. 十分な治癒期間(1年もしくは4年)が経過しても、多角的に根尖病変や臨床症状が存在していると判断される場合。
  2. X線所見等で根管充填に問題が認められる場合。
  3. 臨床症状や根尖病変が認められる場合。
  4. 臨床症状は認められないが、修復もしくは補綴処置が予定されている場合。
  5. 根管充填はされており明らかな問題は認められないが、修復もしくは補綴処置が根管に及ぶ場合。
  6. 根管充填されているが、長期間唾液(細菌)に汚染されている場合。

(Ali Alqerban European Journal of Orthodontics, 2019, 238–243 )

(AAE&ESEのガイドラインを参考に一部改変)

根管治療後に矯正移動はいつ開始できるか? 

根管治療を行った後、いつから矯正移動開始できるかに関しては、現在まで、様々な意見があります。しかしながら、当院では、最新の文献を踏まえマイクロスコープやラバーダムを用いた適切な根管治療を行っている場合に限りは、矯正移動が根尖性歯周炎の治癒に有意な影響を与えないと考え、矯正移動は、痛みや腫脹、サイナストラクト等の症状がなく、機能的にも問題ない状況であれば2週間から4週程度で矯正移動が可能であるとの当院院長が執筆したガイドラインを用いて根管治療と矯正治療を最適かつ効率的に行なっております。

参考文献

  1. ザ・クインテセンス 2020 Vol.39 “包括的矯正歯科治療”へのいざない 第5回 歯内療法と矯正歯科治療
    綿引淳一 著
  2. Br J Orthod 1996 Aug;23(3):255-60. Orthodontic Management of Root-Filled Teeth
  3. Dental Press J Orthod 2013;18(4):2-7. Orthodontic Movement of Endodontically Treated Teeth
  4. Giornale Italiano di EndodonziaVolume 27, Issue 2, November 2013, Pages 95-104 Cyst-like periapical lesion healing in an orthodontic patient: a case report with five-year follow-up

根管治療+成人矯正の症例①

ガタッパーチャーを用いた通常の根管治療を行なった歯に矯正移動を行うと以下のような問題が生じる可能性が指摘されております。

  1. アピカルシールが破壊され緊密な根管充填が破綻する可能性がある
  2. ガッタパーチャーが骨内に取り込まれる事で、細菌感染の再発を生じるリスクがある

(REVIEW Endodontic-orthodontic relationships: a review of integrated treatment planning challenges International Endodontic Journal, 32, 343±360, 1999)

当院では、矯正治療に配慮したMTAセメントを用いた根管治療(保険外)を行なっております。MTAセメントを用いた根管治療は、 近年注目されている次世代の根管充填方法です。当院では、MTAセメントとマイクロスコープを用いた精密根管治療専門外来も行なっているために精密根管治療だけを求めて訪れる患者さんや他の歯科医院からのご紹介患者様もたくさんいいらっしゃいます。MTAセメントは、生体親和性、歯根破折抵抗の向上、抗菌性、適度な膨張性など様々な点で、優れているとの報告がある耐破折性が高くなることが報告されています。

50代女性。重度の叢生で多くの不良補綴物ならびに根管治療歯が矯正前に存在。

左側1番に根尖病巣。右側2番にファイルの破折が存在。
矯正治療開始前に右側3、1 左側1、2、6番をMTAを用いた根管治療を行った。

矯正治療後、3〜2部位にオールセラミッククラウンを装着時のx線所見。
軽度の歯根吸収ならびにMTAの根尖からの漏洩が一部認められるが明らかな根尖部の病変並びに一切の臨床症状は認められなかった。
また、矯正移動の停滞なども認められなかった。