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矯正治療を始める前に知っておきたい「歯周病」のこと ― 歯並びだけでなく、歯ぐきの健康が矯正成功のカギを握ります

包括的矯正歯科治療
2026.04.06

「歯並びを治したい」「噛み合わせが気になる」――矯正治療を考えるきっかけは人それぞれですが、矯正治療の相談にいらっしゃった方に私たちが最初にお伝えすることがあります。それは、「歯ぐき(歯周組織)の健康状態が、矯正治療の成否に大きく関わっている」ということです。

「矯正と歯周病に何の関係があるの?」と思われるかもしれません。しかし実は、この二つは切っても切れない関係にあります。今回は、矯正治療をご検討中の方にぜひ知っていただきたい「歯周病と矯正治療の関係」について、わかりやすくお話しします。


そもそも歯周病とは?

歯周病は、歯と歯ぐきの境目にたまった細菌(プラーク)が原因で起きる感染症です。日本では成人の約8割が何らかの歯周病の症状を持っているといわれており、決して珍しい病気ではありません。

歯周病の大きな特徴は、初期段階ではほとんど自覚症状がないことです。痛みがないまま静かに進行し、歯を支えている骨(歯槽骨)が少しずつ溶けていきます。歯ぐきが腫れる、ブラッシングのときに出血する、口臭が気になるといった症状に気づいたときには、すでにある程度進行していることも少なくありません。

歯周病は大きく分けると、歯ぐきだけに炎症がある「歯肉炎」と、歯を支える骨にまで影響が及んでいる「歯周炎」の二段階があります。歯肉炎の段階であれば適切なケアで改善が期待できますが、歯周炎にまで進行すると、溶けてしまった骨を元通りにすることは難しくなります。

歯周病の進行度は、歯と歯ぐきの間にある溝(歯周ポケット)の深さで評価されます。健康な状態では歯周ポケットの深さは1〜3ミリ程度ですが、歯周病が進行すると4ミリ以上に深くなり、重度の場合には6ミリを超えることもあります。ポケットが深くなるほど、その中に細菌が入り込みやすくなり、ご自身の歯みがきだけでは汚れを取り除くことが難しくなります。

さらに注意していただきたいのは、歯周病は一度かかると「治癒」というよりも「コントロール」していく病気だということです。適切な治療とケアによって炎症を落ち着かせ、進行を止めることはできますが、油断すると再び悪化する可能性があります。そのため、長期的な管理が非常に重要になります。

※日本歯周病学会HPより引用


なぜ矯正治療の前に歯周病のチェックが必要なのか

矯正治療は、歯に力をかけて少しずつ動かしていく治療です。歯が動く仕組みを簡単にご説明すると、歯に力が加わると、歯の周りの骨が「吸収(溶ける)」と「再生(新しくつくられる)」を繰り返すことで、歯が目的の位置へ移動していきます。

ここで重要なのは、この仕組みが正常に働くためには、歯を支えている骨や歯ぐきが健康な状態であることが前提になるという点です。

もし歯周病があり、すでに骨が減っている状態で矯正の力をかけてしまうと、どうなるでしょうか。本来であれば骨の吸収と再生がバランスよく進むところが、歯周病による炎症が加わることで骨の吸収ばかりが進んでしまう恐れがあります。結果として、歯を動かすどころか、歯がぐらぐらになってしまったり、歯周病がさらに悪化してしまうリスクがあるのです。

つまり、矯正治療を安全に進めるためには、まず歯周病の有無や進行度を正確に把握し、必要に応じて歯周治療を先に行うことが不可欠です。

この検査では、歯周ポケットの測定、レントゲン撮影による骨の状態の確認、歯の動揺度(ぐらつき)のチェック、出血の有無の確認などを総合的に行います。見た目では歯ぐきがきれいに見えても、レントゲンで確認すると骨が減っていたということは珍しくありません。特に30代後半以降の方は、ご自身では気づいていない歯周病が見つかることがよくあります。

また、歯周病の進行パターンは人によって異なります。すべての歯が均等に影響を受けるのではなく、特定の歯だけ骨が大きく減っているケースや、奥歯と前歯で進行度が異なるケースなど、さまざまです。そのため、お口全体を詳しく検査したうえで、どの歯をどのように動かすかという矯正治療の計画を立てる必要があるのです。


歯周病があると矯正治療はできないの?

「歯周病があったら矯正はあきらめないといけないの?」というご質問をいただくことがあります。

答えは「いいえ」です。歯周病があっても矯正治療は可能です。ただし、条件があります

もっとも大切な条件は、矯正治療を始める前に歯周病の炎症をしっかりコントロールすることです。具体的には、歯ぐきの炎症を抑え、プラークや歯石を徹底的に除去し、歯周組織が安定した状態にしてから矯正治療に入ります。

歯周病の治療と矯正治療を並行して進めるケースもありますが、この場合も歯周病の管理を継続しながら矯正の力を慎重にコントロールすることが必要になります。いずれにしても、歯周病の専門的な知識を持った歯科医師による管理のもとで治療を進めることが非常に重要です。


矯正治療が歯周病の改善に役立つケースもある

意外に感じるかもしれませんが、矯正治療を行うことで歯周病のリスクを下げたり、歯周組織の環境を改善できるケースもあります。

歯並びの乱れが歯周病リスクを高めている場合

歯が重なり合っていたり(叢生)、歯と歯の間に不自然な隙間があったりすると、ブラッシングが行き届かず、プラークがたまりやすい環境になります。こうした歯並びの問題を矯正治療で改善すると、お口の清掃性が格段に向上し、歯周病の予防・管理がしやすくなります。

噛み合わせの問題が歯周組織に負担をかけている場合

噛み合わせが悪いと、特定の歯に過度な力がかかり続けます。この過剰な力(咬合性外傷)は、歯周病がある歯にとっては骨の吸収を加速させる要因になります。矯正治療で噛み合わせを整えることで、歯にかかる力のバランスが改善され、歯周組織への負担を軽減することができます。

歯が傾いたり移動してしまっている場合

歯周病が進行すると、歯を支える骨が減ることで歯が傾いたり、前に出てきたりすることがあります(病的歯牙移動)。このような歯を矯正治療で適切な位置に戻すことで、噛み合わせの改善だけでなく、歯周組織の環境を整えることにもつながります。


「包括的治療」という考え方

当院が大切にしているのは、「包括的(interdisciplinary)」な歯科治療という考え方です。

矯正治療だけ、あるいは歯周治療だけを単独で行うのではなく、お口全体の状態を総合的に診断し、矯正治療と歯周治療を組み合わせて進めていくアプローチです。

たとえば、歯周病によって骨が減っている部位の歯を動かす場合には、骨の状態に応じて矯正力の大きさや方向を細かく調整する必要があります。また、矯正治療中も定期的に歯周組織の状態をチェックし、必要に応じて歯周治療を行います。矯正治療が終わったあとも、歯周組織の安定を維持するためのメンテナンスが欠かせません。

このように、治療の各段階で矯正と歯周の両面から管理を行うことで、より安全で、長期的に安定した治療結果を目指すことができます。

包括的なアプローチのメリットは、それぞれの治療を単独で行う場合には得られない相乗効果が期待できる点にあります。矯正治療によって歯の位置を整えれば清掃性が向上し、歯周治療の効果が維持しやすくなります。一方、歯周治療によって歯ぐきと骨の状態が安定すれば、矯正治療で歯を安全に動かすことが可能になります。お互いの治療が、お互いの治療効果を高め合うのです。

ただし、こうした包括的な治療を行うためには、矯正歯科と歯周治療の両方に深い知見を持つ歯科医師が担当することが重要です。一般的には、矯正治療は矯正の専門医が、歯周治療は歯周病の専門医がそれぞれ別に行うことが多いですが、両方の領域に精通した歯科医師のもとで一貫した治療計画に基づいて進めることで、より精度の高い治療が実現できます。


矯正治療中に歯周病を悪化させないために

矯正治療を始めてからも、歯周病のリスク管理は継続して行う必要があります。特にワイヤー矯正の場合、ブラケットやワイヤーが装着されることで歯みがきが難しくなり、プラークがたまりやすくなります。

毎日のセルフケアが基本

矯正装置が入ると、装置の周りに汚れがたまりやすくなります。通常の歯ブラシに加えて、タフトブラシや歯間ブラシを使って、装置の周りや歯と歯の間を丁寧に清掃することが大切です。フロス(糸ようじ)も、矯正装置に対応した使い方を覚えていただくと、より効果的にプラークを除去できます。

歯みがきにかける時間の目安は、矯正装置がない場合でも朝晩各3分以上が推奨されていますが、装置が入っている間は1回あたり5分以上を目安に、鏡を見ながら磨き残しがないか確認しながら行っていただくのが理想的です。磨き方のコツは、通院時にスタッフからご説明いたしますので、ご安心ください。

また、矯正治療中は洗口液(マウスウォッシュ)の併用も有効です。殺菌作用のある洗口液を使うことで、ブラッシングでは届きにくい部分の細菌を減らすことが期待できます。ただし、洗口液はあくまで補助的なものであり、ブラッシングの代わりにはなりませんので、歯みがきが基本であることは変わりません。

定期的なプロフェッショナルケア

ご自身での毎日のケアに加えて、歯科医院での専門的なクリーニングも重要です。矯正治療中はとくに、歯周組織の状態を定期的にチェックしながらプロフェッショナルケアを受けていただくことで、歯周病の発症や悪化を防ぐことができます。

当院では、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を活用した精密な歯周管理を行っています。拡大視野のもとで歯ぐきの状態を細かく確認しながら、きめ細やかなケアを提供しています。

生活習慣の見直し

歯周病のリスクは、お口のケアだけでなく、全身の健康状態や生活習慣とも関わっています。たとえば、喫煙は歯周病を悪化させる大きなリスク因子として知られています。また、糖尿病やストレス、睡眠不足なども歯周病の進行に影響を与えることがわかっています。

矯正治療の期間中は、こうした生活習慣にも目を向けていただくことで、治療の効果を最大限に引き出すことにつながります。


矯正治療を検討中の方へ ― まず「歯ぐきの健康診断」から

矯正治療を始めるにあたって、もっとも大切な第一歩は「お口の中の精密検査」です。歯並びや噛み合わせだけでなく、歯周組織の状態もしっかり調べることで、お一人おひとりに合った安全な治療計画を立てることができます。

「歯周病がある(あるいは過去にあった)けれど、矯正治療を受けたい」という方こそ、矯正と歯周の両方に専門的な知識を持つ歯科医院での相談をおすすめいたします。

当院では、矯正歯科と歯周治療の両分野の専門性を活かし、お一人おひとりの状態に応じた包括的な治療をご提案しています。

「自分の歯ぐきの状態で矯正治療はできるのかな?」
「歯周病と言われたことがあるけれど、歯並びも気になっている」

こうしたお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。完全予約制で、じっくりお話を伺いながら、最適な治療の進め方を一緒に考えてまいります。


まとめ

最後に、この記事のポイントを整理します。

歯周病は、歯を支える骨を溶かしていく感染症です。初期には自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行しているケースが多く見られます。日本の成人の大半が何らかの歯周病の兆候を持っているとされており、「自分は大丈夫」と思っている方でも注意が必要です。

矯正治療は、歯を支える骨と歯ぐきが健康であることが前提の治療です。歯周病が未治療のまま矯正の力をかけると、骨の吸収が進んでしまうリスクがあります。だからこそ、矯正治療を始める前に歯周組織の精密検査を行い、歯周病がある場合はまずその治療を行ってから矯正に入ることが大切です。

一方で、矯正治療によって歯並びや噛み合わせを改善することが、歯周病の予防や管理に役立つケースも数多くあります。歯周病があっても、適切な歯周治療と管理のもとで矯正治療を行うことは十分に可能です。

大切なのは、矯正と歯周の両方を見据えた「包括的な治療」という視点です。歯ぐきの健康を守りながら歯並びを整える、その両立こそが、長く使える美しい歯を手に入れるための近道だと私たちは考えています。

矯正治療は見た目を良くするだけの治療ではありません。正しい噛み合わせをつくり、お口の清掃性を高め、歯周組織の健康を長く維持するための治療でもあるのです。歯並びが気になっている方はもちろん、歯周病を指摘されたことがある方も、まずは一度ご相談いただければと思います。お口の中の状態を丁寧に検査し、お一人おひとりにとって最善の治療の道筋を一緒に考えてまいります。


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矯正相談

当院では、皆様に矯正治療を開始するかどうかをじっくり考えて、納得いく形で治療をスタートしていただくために「矯正相談」を行っております。
理想の歯並びを手に入れる第一歩として、あなたの歯並びの現状や矯正治療に関する疑問や不安を解消する場としてぜひご利用ください。

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